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【イベントレポート】3/20(月)開催 妻夫木聡さん登壇ティーチインイベント

先日発表された第46回日本アカデミー賞において、作品賞・監督賞・主演男優賞をはじめとする主要8部門の最優秀賞を受賞した本作。この度、この日本アカデミー賞での快挙を記念して、主演の妻夫木聡が登壇するティーチイン舞台挨拶が新宿ピカデリーにて実施されました。
本編上映終了後、満席の観客の前に日本アカデミー賞のブロンズを手に登場した妻夫木。はじめに「今日は遅い時間にも関わらずこんなにたくさん(お客様が)来てくださって嬉しいです。今日はせっかくの機会なので最後まで楽しんでいってください。」と挨拶すると、会場からは割れんばかりの拍手と歓声が沸き上がった。つづいて、この日はスケジュールの都合で参加が叶わなかった石川慶監督から、なんとサプライズメッセージが到着!「公開時に、細くても、長く愛される映画になってくれればと言ったのを覚えていますが、まさにその望みが叶った気がしています。そして妻夫木さんお忙しい中ありがとうございます。授賞式の後の打ち上げも楽しかったですね。今、(撮影で)タイのバンコクですが、こちらの人たちからもたくさんのおめでとうをいただいてます。「ある男」、世界中もっと多くの人たちに届きますように。そして、この熱気の冷めないうちにぜひ、次の企画を!」と、MCの代読で喜びのコメントが披露されると、「今すぐ企画を立ててほしいですね!」と妻夫木が笑顔で即答し、和やかな雰囲気でイベントがスタートした。

昨年11月に公開された本作は国内外での映画賞を席巻、そして先日の第46回日本アカデミー賞で最優秀賞を最多8冠獲得するという快挙を成し遂げた。最優秀主演男優賞を受賞した妻夫木は、受賞の瞬間について「本当に信じられなかったですね。(賞を)頂けると思っていなかったので、何を話したらいいか頭が真っ白になってしまって。実際にブロンズを頂いてから、この重みを感じたときに、自分はこれだけ色んな思いを抱えてこの作品に挑んでいたんだと実感しました。」と振り返った。受賞式後には監督やスタッフ、原作者・平野啓一郎氏とも打ち上げで喜びを分かち合ったといい、「平野先生が、(映画をきっかけに)『ある男』がいろんな国で愛されていると仰っていて。原作の小説は映画化が難しいと言われていたが、石川監督と脚本の向井さんが見事に仕上げてくださった」という原作者の絶賛エピソードを披露。そしてまさにこの小説を、映画という一つの形にまとめ上げた石川監督については、「自分の時には泣かなかったのに監督が受賞したときには号泣しちゃって。監督は元々ポーランドで活動していて、彼のショートフィルムを初めて観たときから、この人は日本映画にはない才能を持っていると感じ、是非一緒に仕事がしたいと思っていました。」と、改めて監督としての魅力を明かし、「(妻夫木聡主演、石川監督長編デビュー作)『愚行録』からずっと石川監督の才能を目の前で見てきた思いがあったので、みんなからはっきりと認められた瞬間に立ち会えたのは物凄く嬉しかった。」と心からの喜びを語った。

続いてイベントは観客からの質問に生回答するティーチインパートへ。そのタイミングで、「見た目以上に重い」というブロンズを椅子に置き、妻夫木聡自身は立つ格好に。スタッフが一時的に預かるかと尋ねると、「ちょっと今日は自慢させてください!(笑)」と満面の笑みを見せ、ブロンズと共に並んだ姿で観客からの質問に生回答することとなった!

Q:日本アカデミー賞受賞おめでとうございます。忘れないように質問を紙に書いてきました!映画を観て思ったのは、
今の社会で人生をやり直せるチャンスはどれぐらいの人に与えられているのだろう、ということです。妻夫木さんは今までの人生でやり直したいと思ったことはありますか?

妻夫木「やり直したいと思うことは無いかもしれないですね。良いことも悪いことも全部含めて今の自分がいるし、失敗したと思うことがあっても、それが糧となって力になっていると思うので。ただ一つ決めているのは後悔しないこと。失敗してもいいから、最後の最後まで諦めないでやり尽くすが大事かなと。後は、本気になること。妥協することも時には必要かもしれないけど、僕自身はやっぱり最後まで自分と作品を信じたいと思って取り組んでいるので、やり直したいと思うことは無いです。つい最近、(共演した安藤)サクラちゃんの出てる『ブラッシュアップライフ』というドラマを観て、自分だったらどうするだろう?って考えることもありましたけど(笑)」

Q:去年観た作品の中で一番面白いと思いました。作中、(妻夫木演じる)城戸は、普段は穏やかなのに突然怒鳴ったり、
表情が急に変わるところに目が惹かれましたが、そのようなシーンはどのように意識されましたか?

妻夫木「原作者の平野先生が提唱されている“分人主義”が根底にあると思います。人間って理想を追い求めるところがあるけれど、ダメな自分も自分だと肯定してあげることもすごく大事なんじゃないかと、“分人主義”に出会ったときに考えさせられて。それが城戸という人物のアイデンティティーと一致したような気がしたんですよね。役作りをする中で、この人はこういう人間だろうと決めつけがちになるけど、そうではなく、もっと色んな顔を持つべきなんだろうなとシフトすることが出来ました。」

Q:国籍や生まれた環境など、人間は自分ではどうにもできないことを背負うことがあるが、良いことも悪いことも含め、妻夫木さん自身は誰かと何かを交換したいと思ったことはありますか?

妻夫木「めちゃくちゃあります!僕の苗字、妻夫木ですよ(笑)?!小学校の頃から、転校する度に妻夫木ですと自己紹介するのが大変で、何で僕“佐藤”じゃないんだろうって何回思ったか(笑)!でもこの仕事を通して、この苗字が皆さんに浸透するようになってからは、妻夫木でよかったなあと、自分の名前を誇れるようになりました。ただ、今でも芸名にすればよかったと思う瞬間は、病院に行ったとき。(体調が)一番つらい状況の中で名前を呼ばれて、みんなに見られるのは大変(笑)。未だに違う人物になりたいと思う瞬間ですね(笑)。」

Q:11月に実施された脚本担当・向井康介さんとのティーチインの中で、脚本から引き算をして、観客の解釈の余地を残しながら作品を作っていたという話がありましたが、演じる側の妻夫木さんたちも、観客側を信じて作品を作り上げてくださったのでは?

妻夫木「それはもちろんです。観客の皆さんにきっと届くと信じていますし、それはきっと僕たち自身が本気で作品に取り組んでいるからこそ伝わるものだと思っています。今回作品づくりの中で、一番削いだのは僕のセリフだったんです。物語終盤、“大祐”という人物を掘り下げていく中で、城戸のセリフが少し説明過多になっていたところがあって。言葉にすることで“大祐”の人物像が、それまでになってしまう。それよりも、窪田くんの演技によって彼の誠実さ、純粋さは観客の皆さんに届いてるはずだから、それでいいじゃないかと。石川監督も、役者の演技を信じて、観客に絶対に届いているという自信があったと思います。 」

名残惜しくも終了の時間が迫り、イベントは最後にフォトセッションへ。妻夫木は受賞ブロンズを再び手に取ると、掲げるポーズをとって満面の笑みで写真撮影に応えた。更には「僕も撮っていい?」と、なんと観客と共に自撮りで記念撮影をすることに!最後には「皆さまの応援があって、僕自身、そして作品賞が頂けたのだと思っています。今日このような舞台挨拶ができたことも、皆さまのお陰だと思っています。本当にありがとうございました!」と感謝の思いで締めくくり、盛大な拍手で見送られながらイベントは幕を閉じた。

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