2021年の中国映画業界に激震が知った。同年公開の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『DUNE/デューン 砂の惑星』などのハリウッド大作が、はるかに低予算で製作された『シスター 夏のわかれ道』に興行収入で屈したのだ。
人生に悩みながらも成長する主人公アン・ランの姿、そして揺れる姉弟の絆が観る者の心を動かした本作。中国ではSNSで「#SISTERをどう評価するか」、「#個人の価値は家族の価値より大切なのだろうか?」と感動と共感の熱い声が爆発的に広がり、アン・ランの“選択”が瞬く間に全土で論争を巻き起こした。その結果、2週連続興収No.1の快挙を成し遂げ、興収171億円を突破するという社会現象に。
国内の映画賞では中国版アカデミー賞とされる金鶏奨で助演女優賞、長春映画祭で金鹿賞最優秀女優賞、華鼎奨で最優秀助演女優賞の受賞をはじめ、作品、監督、脚本など多部門にノミネートされた。アン・ランを演じるのは新世代のスター、チャン・ツィフォン。弟役のダレン・キムは映画初出演にして、観客が号泣するほどの名演を見せた。監督のイン・ルオシンは、“自分の人生は自分で選ぼう”と静かで熱いメッセージを本作に込めた。
脚本は『妻の愛、娘の時』(17)で、香港電影金像奨で最優秀脚本賞を受賞したヨウ・シャオイン。新鋭の女性作家のタッグが、揺れ動く“いま”の中国社会の背景にある一人っ子政策と家父長制の影に真正面から切り込んだ。
人生で大切なものとは何か?迷いながらも現代を生きる私たちに勇気をくれる感動作が誕生した。
小さな弟に慕われ、姉は次第に母の顔になって行く。
拙作でご一緒して以来、久方ぶりに見た張子楓は少し大人の顔になっていた。
岩井俊二
頭きた。ひどいじゃないか。女が何したっていうんだ。残酷な制度に踊らされた人々。 何人たりとも、フロイドのTシャツを着たアン・ランに、敬意を表さねばならぬ。せめてもう、放っといて。何も我慢させないで。
大九明子 (映画監督)
彼女の揺れ動く心の変化や行動を目の当たりにして、自分だったらどんな選択をするだろうと考える。
小谷実由 (モデル)
大人になれない人たちが放棄した責任のツケが、
大人にならざるを得なかった人たちの背中に重くのしかかっていく──。
家父長制を生きるすべての男性が向き合うべき問題だと痛感しました。
清田隆之 (文筆業・「桃山商事」代表)
一人っ子政策 その影響が未だ顕著な中国で この作品は大ヒットした。
この物語が人ごととは思えなかったのだろう。
久米宏 (フリーアナウンサー)
疎遠だった両親の死、年違いの弟の出現。
中国の一人っ子政策ゆえの歪みをテーマにした物語。
健気な弟の描写や途々に変化していく姉の姿に感動しました。
特にラストシーンは心に沁みました。
是非 多くの人に見てもらいたい作品です。
陳建一 (四川飯店オーナーシェフ)
自分で「選ぶこと」と「選ばされること」とは天と地ほど違う。ジェンダーや、社会システムの歪みが個人の人生をどのように損なうか。
この映画は、一つの告発であり、同時に新しい明日への賛歌でもある。
寺尾紗穂 (文筆家・音楽家)
もし働きながら大学院進学を目指すけなげな彼女が男性だったら?
突然あらわれたやんちゃな弟が妹だったら?
事態はだいぶ違っていたはずだ。むずかしい選択を迫られる主人公を応援せずにはいられない。
野中モモ (ライター・翻訳者)
チャン・ツィフォンの瞳に全てが語られている。悲しさ、悔しさ、愛しさ。彼女が泣くと悲しくなる、彼女が笑うと嬉しくなる。瞬きするのが惜しいくらい心が震えた映画体験でした。
藤井道人 (映画監督)
国全体の一人っ子政策が実際に個人に何をもたらしたのかを普通我々はあまり想像しないだろう。それを体感させてくれるのが映画の力だ。 そこには私たちとは全く違う社会に翻弄された個人のリアルな人生がある。
質の高い作品にはたくさんの観客が集まるという理想的な真理まで証明したという。素晴らしい。
賢くクールな若者が情に心を覆われてゆく様は人間とは何者かを私に思い出させる。
(俳優)
一人っ子政策の記憶、根深い家父長制の影。その傷を負って生きるのは一族の中の「シスター」たちなのだ
ブレイディみかこ (ライター)