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映画『こんにちは、母さん』完成披露試写会レポート

9月1日(金)公開の映画『こんにちは、母さん』。山田監督にとって90本目となる記念すべき本作の<完成披露試写会>が7月31日(月)に実施されました。

多くの観客に迎えられる中、吉永小百合、大泉洋、永野芽郁、宮藤官九郎、田中泯、山田洋次監督が登壇。それぞれ一言ずつ挨拶し、舞台挨拶がスタートしました。

吉永(神崎福江 / かんざき・ふくえ役)皆様、今日はお暑い中、そしてウィークデーの最初の日の昼間という大変なときにお運びくださいまして、本当にありがとうございます。山田監督の作品『母べえ』『母と暮せば』では、戦前から戦後で大変辛い時期を苦しみながら耐える母を演じさせていただきました。今作ではちょっと飛んでて明るく、みんなと一緒に生きていく母を演じました。ぜひこの映画を楽しんで頂ければと思っております。よろしくお願いいたします。

大泉(神崎昭夫 / かんざき・あきお役)吉永さんの息子役として私がいまして、更にその私から生まれた永野芽郁ちゃん。吉永さんから永野さんが生まれるならわかる気がするんですが、一体何が起きて間にこれ(大泉)が生まれたのかっていうのが分からない。映画の中でも“突然変異”という言葉で処理させていただいています(笑)。ですが、この映画を観ますと、不思議と親子にしか見えないので、安心して観ていただきたいです。古き良き日本の姿だとは思うんですけれども、その一方でどこか新しさも感じる斬新な映画です。山田監督のまた新たな挑戦を皆さんで見ていただければと思っております。

永野(神崎舞 / かんざき・まい役)山田組には2度目の参加でしたが、すごく久しぶりな監督作品でさらにこれだけ素晴らしい先輩方とご一緒できたことが本当に光栄でした。

宮藤(木部富幸 / きべ・とみゆき役)大泉さんにすごく迷惑をかける役を演じました。これから鑑賞いただくということで、僕の好感度はこれから下がっていきますので、今が一番いい状態です。(笑)素晴らしい作品ですので、よろしくお願いいたします。

田中(イノさん役)山田監督とは20年ぶり(たそがれ清兵衛)にご一緒させていただきました。イノさんという橋の下に暮らすホームレスを演じさせていただきました。登壇キャストの皆さんとは、深い関わりがない役どころではありますが、一生懸命演技させていただきました。素晴らしい作品に出ることができて感動しております。どうぞゆっくりご覧になってイノさんって何なんだと考えていただけると嬉しいです。

山田監督素敵な俳優さんたちと力強い大勢のスタッフに恵まれてこの映画を撮影しました。今作は古くからの下町・向島を舞台に映画を作りました。原作でも隅田川花火シーンで終わるラストシーンが素敵でそのまま起用しました。去年も一昨年も隅田川の花火大会は中止になっていて、今年も中止となってしまうと、(設定が今年令和5年の)この映画で描かれる事は嘘ということになってしまいますからね。ですが今年はめでたく無事開催されてホッとしながら見ておりました。この映画がようやく封切りになるわけです、皆さんどうぞよろしくお願いいたします。

新作を披露する今の心境について問われると、監督は「判決を聞く被告の気持ちであります。できることならば無罪であってほしい、変わらないものですね。何十年も映画をたくさん作ってきたけども、本当に不安なものですね。」と答えました。

山田監督にとって90本目となる記念すべき作品で主演を務めたのは、吉永小百合。本作で演じたのは、家業にボランティアに恋愛まで、人生をイキイキと楽しむ母・神崎福江というキャラクター。“下町のお母さん”というこれまでにない役どころへの挑戦となったが、役作りについて問われると「大泉さんのことを“お前”と呼ぶことに抵抗がありました。それが生まれて初めてのことで、最初は戸惑いがありました。撮影前に本作の舞台となった下町・向島を監督と歩いたときに、そこに暮らしていらっしゃる方たちがいきいきしてらっしゃるんですね。(神崎家の)モデルとなった足袋屋さんにも伺ったのですが、とっても素敵な場だなと思って、それをいつも思いながら撮影に臨みました」と答え、吉永演じる福江がやけ酒のようにお酒を飲むシーンについては「お酒はちょこっとはいただくんですけど、あんな風に酔っ払ったことはないので、大泉さんがサポートしてくださって楽しかったですね」と振り返り、はにかみました。そんな酔う姿を演じる吉永を間近で見ていた大泉は「監督がとても細やかに演出なさるので、なかなか見れない吉永さんが見れた。可哀想な場面なんだけど吉永さんの可愛らしさが溢れていた」と振り返えりました。

今回が山田組初参加となる大泉洋。毎日充実した生活を送る福江と対照的に、仕事に家庭に悩みが尽きない福江の息子、神崎昭夫役を演じました。撮影について「セットが素晴らしく、足袋屋の中で吉永さんにお会いすると本当に母さんにしか思えない。そんな中で“お前”と言われるのはなんの違和感もなく、本当に昔から言われてたような気がした。長回しでセリフが多い中、撮影がうまくいったときに飛び上がって喜ぶ姿が可愛らしいと思った」と吉永との初共演への喜びをにじませていました。

昭夫の娘・神崎舞を演じたのは、永野芽郁。大泉と永野も本作が初共演だが、父・大泉について永野は「父や母に対してある種の甘えはあるので、大泉さんを前にするといつも以上に自分の気持ちが高ぶる瞬間もあればぶつけたくなるような瞬間があった。それを全部受け止めてくださったので、“好きな父“でした。大泉さんはカメラが回っていない時も話が面白く、撮影後も食事に連れて行ってくださったり、(まるで本当の)父のように可愛がってくださいました」と振り返り、大泉へ絶大な信頼を明かしました。

大泉と同じく、本作が山田組初参加となった宮藤官九郎は、昭夫の大学時代からの友人かつ、会社の同僚でもある木部富幸をコミカルに好演。映画監督としての顔も持つ宮藤だが、「現場で全部ジャッジするんですよ。山田洋次は迷わないと思っていたんですけど、こんなに作品を撮ってても現場で考えるんだと、勇気をもらった気がします。撮影終盤、(大泉との共演シーンで)思ってもみないような量の台詞が増えて流石に無理だろうと“これ本当にやるんですか?“と思わず聞いたら”やるんだよ”言われた」と唸り、並々ならぬ監督の演出に刺激を受けた様子。「監督の映画が面白いのは、脚本、役者はもちろんのこと、現場で足す監督のアイデアが面白いんだなと気付いた」と語る大泉に続くように、「実はあれもうちょっと足したかった」というまさかの監督の発言も飛び出し会場は笑いに包まれました。
監督とは数々の映画でタッグを組んできた吉永は「監督がそういう風に現場で台詞を足すことを“号外“と呼んでおりまして、台詞が違うものになって当日必死に覚えることがあります」と山田組の撮影裏側を明かしました。これについて監督は「現場はちょっと興奮しているからこそ、今、新しく足して間違いないのかを考えて、冷静に判断しながらやっていかないといけない」と宮藤が言及した”現場でのジャッジ”の大切さを語りました。

福江がボランティアで何かと気にかけるおじいさん、通称“イノさん”役に扮したのは、田中泯。俳優業について「(自分は)相変わらずのど素人だなと思って、一生懸命はやってはいるんですが、まだ全然分かっていない」と話す田中について監督は「そんな謙虚なところが泯さんの素晴らしいところじゃないでしょうか。こんなに変わらない人も珍しい」と感慨深い様子で語りました。

フレッシュな面々から常連組まで、バラエティに富んだ豪華俳優陣が集結した本作。今までの山田洋次作品にはない、新たなお母さん像が描かれる本作だが、監督は「吉永さんを“おばあちゃん”と呼ぶのは抵抗があった。あえてそれをお願いして、年相応の仕草が必要なのか考えていたが、テストをやっているうちに、とても美しくて可愛らしいところがあって、そういう綺麗なおばあちゃんがいてもいいじゃないかと思ったんですね」とコメント。そんな吉永の孫を演じる永野は「すごく光栄でしたし、吉永さんご自身でミシンを動かしている姿をみて、その街でその場所にいらっしゃる本当のおばあちゃんのように見えました。お手紙や撮影合間に和菓子をくださって大事にいただきました」と吉永からの優しさに触れながらも女優としての憧れの思いを馳せました。

初のおばあちゃん役や、歳を重ねて恋をするなどチャレンジングな役どころについて吉永は、「舞台劇の映画化なので台詞が多く、歳を重ねるとだんだん頭に入る量が少なくなってきて、その点ではとても大変でした。台詞を全部書いて覚えるという方法を伺って、私もそういうこともやりました」と台詞覚えに苦労したと語る。さらに寺尾聰演じる荻生に恋するも、息子に否定されてしまうという設定について「恋はとても大事だと思います、どんなに歳を重ねてもときめく心は持っていないといけない。寺尾さんに恋をする役というのはなんかウキウキして楽しかったです」と話し、はにかみました。それに対して大泉は「自分の親が同じ状況ならば正直喜ぶと思う。けれど自分の母親でいてほしいのに、自分の母親に女性の姿は見たくなかったのかなって思います。どこか嫉妬してしまうような感じですかね。」と自分と役を比べならがしみじみと語りました。

その後、キャストを代表して吉永と、監督から観客に向けコメント。「今日はありがとうございます。監督がこの撮影に入る前にもしかしたら途中でできなくなるかもしれないと伺ってとても驚きましたし、辛くなりました。しかし撮影が始まってどんどんお元気なって、本当によかったと思います。たくさんの人に見ていただきたいと切望しております」(吉永)、「僕そんなこと小百合さんに言いました?格好つけてたんだなぁ、でもクランクアップを迎えて途中で倒れなくてよかったと思ったのは事実です。キャストや大勢のスタッフがサポートしてくれて心を込めて作ってみんなの力でできたんだなと思っています。どうぞこの映画をよろしくお願いいたします」(監督)とそれぞれメッセージを送り、イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。

映画『こんにちは、母さん』2023年9月1日(金)全国公開
作品公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/konnichiha-kasan/

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