7月10日(月)、大阪にて本作の合同記者会見および舞台挨拶が実施され、まず行われた合同記者会見では、煌びやかな会場に多くのメディアが駆けつける中、主演の吉永小百合(神崎福江 / かんざき・ふくえ役)と大泉洋(神崎昭夫 / かんざき・あきお役)が登壇。それぞれ一言ずつ挨拶し、記者会見がスタートした。
主演を務めた吉永は、『母と暮せば』以来、8年ぶりの山田組参加となった本作。久しぶりの山田組の様子について、「前回よりももっと突き詰めて、新しいことを色々やってみようと監督はお考えでしたので、驚くことも多かったです」と印象を語った。
一方、今回が山田組初参加かつ、吉永とも初共演となった大泉。オファー当時を「私の世代ですと山田監督は巨匠で、さまざまな作品も拝見していたので、信じられないような気持ちでした」と率直な心境を回顧。吉永との共演については、「当初は“吉永さんから大泉は生まれない”というコメントを出させていただきましたが、撮影を経て、今では吉永さんから生まれてきたとしか思えない。今やもう札幌に帰って自分の母親を見ると違和感を覚えるくらいです」と笑いを交えながらコメントし、充実な撮影ぶりをうかがわせていた。さらに山田組の雰囲気について問われると、「常に山田監督も真剣でしたし、厳しい演出が入る場面もあったので、緊張感がある現場ではありました」と明かす大泉。「ただ、監督から台本にはないアイディアが出てくることもあって、それが全部面白いんですよね。セリフを変えられることもあったんですが、全部センスがあって。改めて山田監督作品は、監督のアイディアで面白くなっていくんだなと実感しました」と語り、現場での貴重なエピソードも披露していた。
その後、記者会見では記者から登壇者へ質疑応答が実施。
まずは記者から、孫を持つおばあさん役というこれまでにない新鮮な役どころを演じた吉永へ、「本作での役作りや気をつけたこと」に関する質問が。
吉永は「監督から“孫のいる役はどうですか?”と提案があって。“大丈夫です”とお答えしたものの、どうも最初は掴みきれずに、動作もテキパキしてしまって注意されたこともありました」と時には苦戦する場面もあったそうだが、「孫の舞(永野芽郁)とは友達のように接したり、息子に対しても元気づけてあげようとする優しさも持ち合わせているような、今までの山田組で描いてきた“お母さん”とは違う新しさを出せればと思い演じていました」と役作りの秘話を明かした。
続いては、二人に向け「もしも本当の親子だったら、お互いの魅力的なところ、苦労しそうなところはどこだと思いますか?」という質問が。
お互いの魅力について、「いつも何かに興味を持って、楽しそうにしてらっしゃるところ」(吉永)、「なんと言っても、やはりチャーミングなところですかね」(大泉)とそれぞれ回答する二人。大泉は劇中で見せる吉永の姿にも魅力を感じていたそうで、「映画でも(吉永演じる)福江が失恋からお酒を飲んで酔っ払ってしまうようなシーンも登場するんですが、そのお姿がなんとも可愛らしい。恋をしてデートに行く姿もやはりお美しいですし」と力説。一方、苦労しそうなところについては、「本当にないんですが…」と前置きしつつも、「元気すぎるところでしょうか。現場でもテキパキされていたのですが、私はついダラダラと過ごしてしまう方なので、もし本当の親子だったら怒られそうだなと」と明かし、会場の笑いを誘っていた。
続いて、「お二人からみた本作の魅力は?」という質問が。
大泉は「私のような世代の方が見れば昭夫を応援したくなるような映画でもあると思いますし、もう一つの見所はやはり恋する母・福江の姿ですよね。好きな人ができた母親の姿にハラハラする場面もあれば、最後は親子が前に進んでいこうとする姿に勇気づけられるようなところもあって…」と魅力を語り、「ある種どこか新しくも思えるような作品だったので、まだこんな風に僕たちをドキドキさせるような作品を生み出せるのかと驚いた次第です」と山田監督の手腕を絶賛していた。
さらに吉永も、「手を取り合ったり語り合ったりすることが減ってきている時代の中で、この映画から心の温かさのようなものを感じてもらえたらとても嬉しく思います。世界的にも大変な時代になってきていますが、そのような本作の魅力を感じとっていただけたら」と語り、本作への想いを滲ませていた。
最後に「本作からどのようなメッセージが伝わって欲しいでしょうか?」という質問。
「私たち世代の方々には、年齢を重ねても前を向いて自分のできることをやっていく大切さが伝わればいいなと思います。劇中でも福江がホームレスの方へ炊き出しをするシーンも登場しますが、福江のように元気に歳を重ねていきましょうという想いが伝われば嬉しいです」(吉永)、「母、息子、孫、三世代それぞれの物語や悩みも描かれているので、どの世代の方が見ても共感したり勇気をもらえるんじゃないかと。老若男女全ての方に楽しんでいただける作品だと思います」(大泉)とそれぞれ想いを明かし、記者会見を締めくくった。
その後、吉永と大泉は記者会見後に行われた舞台挨拶にも登壇。
『母べえ』『母と暮せば』に続き、『母』三部作の集大成とも言える作品に仕上がった本作だが、吉永は「今回の作品は、今までにないような監督の気合いを感じました。“新しい映画を作るんだ”という想いが込められていて…。時には厳しい演出もありましたが、新しい家族の物語に仕上がったんじゃないかと思います」と自信をのぞかせていた。
そんな吉永と本作で初共演を飾ったのが、息子・昭夫役を演じた大泉。今回の共演について、「今こう並んでいると親子には見えないかもしれませんけれども、不思議と現場に入ると小百合さんのお力か、母親にしか思えなかったですね。撮影の二ヶ月間、こんなに素敵な母と過ごせたのが幸せでした」としみじみと語り、喜びを表していた。さらに大泉は山田組にも今回が初参加となったが、監督とは密にコミュニケーションを重ねていたそうで、撮影はとにかく楽しかったと振り返る。「山田監督は色々なことをお話ししてくださるんですよね。撮影に入る前に、“こういうことがあったからこのシーンを書いたんだ”といった背景を教えてくださるおかげで、役も膨らませていくことができました」と貴重な舞台裏でのエピソードも明かしていた。
吉永は、今回本作で初の“おばあさん役”に挑戦。役作りについて特別意識したことはないという吉永だが、「今回は足袋屋のお母さん役。夫を亡くして、下町で一生懸命に生きている人という役どころだったので、そういうおばあちゃんの気概みたいなところは出したいなと思いました」と役への想いを語る。さらに「昭夫に対しても“お前”っていうセリフがあるんですが、映画の中で“お前”って呼びかけるのも初めてで。振り返ってみると新鮮でしたし、演じていて楽しかったですね」と笑顔を見せていた。
大泉扮する昭夫は、大企業の人事部長を務めるサラリーマンという役どころ。「人事部長という立場の辛さから、実家に帰るシーンがあるんですね。ストレスからお母さんに辛く当たってしまう場面もあったり。私も実家に帰ると母親に愚痴みたいなものをこぼしてしまったり、些細な会話から言い合いになってしまうようなこともあったりするので、共感する部分もありましたね」と振り返る通り、同年代の男として昭夫と重なる部分も多かった様子。
親子役ということもあり共演シーンも多かった二人だが、自然と撮影の合間には話をする時間も多かったそう。「私は普段あまりプライベートのお話はしないんですが、大泉さんが聞き上手だったので、ついついあらぬことまで話してしまいました(笑)」と笑みをこぼす吉永。一方大泉は、「特に今回小百合さんはご自身のセリフも多いので、撮影の合間に控えに戻られることも多かったんですね。集中なさってるんだろうなと思いつつ、たまに控えから出てこられた瞬間はもう記者のように張り付いてましたよね。“朝起きる時間は?若さの秘訣は?”なんて聞いたり」と貴重な吉永との時間を逃さまいと質問攻めにしていた様子を明かし、会場の笑いを誘っていた。
さらにトークは二人が観客に注目してほしいシーンについての話題に。吉永は「劇中で昭夫さんが追い詰められて私のところへ逃げてくるシーンがあるんですね。私が庇ってあげて、昭夫さんが私の後ろに隠れるというお茶目なシーンがあるので、ぜひ見逃さぬよう見ていただきたいです」とプッシュ。すると大泉も「宮藤官九郎さん演じる木部が怒るシーンで、思わず母(吉永)を盾にするシーンなんですよね。ちょっと“大泉洋”が垣間見えていたシーンかもしれません」と茶目っ気たっぷりに反応。
そんな大泉は福江が酔っ払ってしまうシーンを挙げ、「切なくも可愛らしいお姿が印象的でしたね。何日かかけて撮影したシーンだったんですが、素敵なシーンに仕上がっていると思います」とコメント。さらに作品全体としても、「爽やかな物語が描かれているので、どの世代の方々が観ても元気になれると思いますし、いくつになっても人を好きになる素晴らしさを感じられる作品になっていると思います」と魅力を語り、見どころをアピールしていた。
そして最後にはフォトセッションが行われ、「山田監督らしさは残しつつ、監督の新しい挑戦も感じられるような面白い作品に仕上がっていると思います。今は配信だったり、一人で映画を観る機会も多くなってきていると思いますが、たくさんの人たちと映画館で観る楽しさもあると思いますので、多くの方に劇場へ足を運んでいただけたら」(大泉)、「山田監督の作品では今までになかったような珍しい撮影の仕方もしましたし、ちょっぴり新しさも感じられる作品だと思います。今回も本当にお心を込めて、素敵な作品を私たちに出演させてくれて、導いてくださったと思います。気に入ってくださったらぜひ周りの方におすすめしていただけたら嬉しいです」(吉永)とこれから本編を鑑賞する一般客に向けメッセージを送り、舞台挨拶は幕を閉じた。