FILMS作品一覧

©2006「武士の一分」製作委員会

武士の一分

2006年12月
スタッフ
原作:藤沢周平 脚本:山田洋次/平松恵美子/山本一郎 監督:山田洋次 撮影:長沼六男 照明:中須岳士 美術:出川三男 音楽:冨田勲
キャスト
木村拓哉、檀れい、笹野高史、十代目坂東三津五郎

山田洋次監督による『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』に続く、藤沢周平原作小説の映画化。役目のため失明した下級武士を支える妻と中間、そして一分を通すため復讐に挑む侍の姿を描く。主役の武士に木村拓哉。その妻に映画初出演の壇れいが扮し、新鮮な存在感を見せている。夫婦の愛の物語であり、白刃閃く復讐譚でもあるこの異色作は、山田時代劇三部作のフィナーレを飾るに相応しいまぎれもない最高傑作である。

山田監督「演出のことば」

江戸時代の二百七十年間、日本では戦争らしい戦争はなかった。その頃ヨーロッパでは国境を接した国々が戦争に明け暮れていたことを思えば、大変な違いです。天下泰平と称された江戸時代の平和は、徳川幕府の圧政によるものではあったが、反面、二百七十年の平和な停滞はこの国の文化に独特な特徴を与えることになります。幕末に大勢の欧米の知識人たちが日本を訪れ、数多くの見聞録を残しました。それらの書物には日本人は穏やかで謙虚で礼儀正しく、その暮らしぶりは貧しくとも清潔であり、農村の風景の美しさにいたっては、ユートピアを見るようだとさえ語られています。映画「武士の一分」は優しい愛妻物語であり、白刃閃く復讐譚でもありますが、この映画を通して、ぼくたちは江戸時代の地方の藩で静かに生きていた先祖たちの姿を敬意を込めて描く、ということをしたいと思います。