FILMS作品一覧

©1972松竹株式会社

故郷

民子三部作
1972年10月
スタッフ
原作:山田洋次 脚本:山田洋次/宮崎晃 監督:山田洋次 撮影:高羽哲夫 照明:飯島博 美術:佐藤公信 音楽:佐藤勝
キャスト
井川比佐志、渥美清、倍賞千恵子、前田吟、田島令子、笠智衆

瀬戸内海の美しい小島で、石の運搬などでささやかな暮しをつづけてきた一家が、高度経済成長の波に追われ、父祖の地に哀惜の思いを残しながら、新天地を求めて移往するまでの揺れ動く心を追う人間ドラマ。舞台となった広島県倉橋島(現呉市)に長期滞在し、1970年の映画『家族』同様ドキュメンタリーの手法も交えて撮影されている。

山田監督「演出のことば」

スタッフ諸氏へ この作品で描かれる「故郷」は、哀しくも失われ行く「ふるさと」ではなく、離れざるを得ない、或は捨てざるを得ない「故郷」です。この舞台は心の「ふるさと」でなく、広島県倉橋町という日本の現実そのものです。この作品の題を「故郷」としたのはまさにその意味です。「家族」でおそるおそる試みて見た実験をこの作品では思い切って拡大しようと考えています。従って脚本はラフ・デッサンと考えて頂きたく、細部にわたって随所に即興的な撮影が予想されます。それがどのようなものになるかは、皆さんと共に考え、発見してゆきたいと思います。僕の思いは即ちスタッフの思いであり、スタッフの思いは即ち日本人の思いである筈だと、深く信じてこの作品を完成させたいと思っています。