著名人のおすすめコメント
- ディック・ステゲウェルンス日本近現代史家(准教授)吉田喜重の「秋津温泉」は成瀬巳喜男の「浮雲」と並んで、日本産メロドラマの絶頂をなしています。同じく温泉地で同じ岡田茉莉子を演出して、「浮雲」を意識せざるを得なかったでしょう。熟年の成瀬と違って吉田はまだ20代で、新米の監督です。非常に知的、スタイリッシュ、難解(多解)な作風で有名な吉田ですが、彼の作品の中で純粋なメロドラマに挑戦した唯一の物になります。その結果はまれにしか発生しないアートと商業映画の結晶です。10年ほど前ヨーロッパに移住して、定期的に日本映画関連の上映企画を西北欧各国で催していますが、最初の企画は2010年の吉田喜重の(ほぼ)全映画作品上映でした。そこで初めて「秋津温泉」の新しいプリントをどでっかいスクリーンで体験する機会を得て、自然、岡田、色、音楽に圧倒されました。映画美の至りです。
一般の方のおすすめコメント
- Comment肺結核を患った主人公・周作と温泉宿(秋津荘)の娘・新子との17年に渡る恋物語。その間、二人の逢瀬は4回だけ。他の男性には見向きもせず、ひたすら周作を待ち続ける新子が健気。純粋な眼差しで一人の男性を愛せるのはとても素敵なことだと感じさせられる。娘役を演じた岡田茉莉子さんの可憐な美しさが際立つ作品。岡田さんがご自身の名前にちなんで着ていた手毬の羽織がとても印象的で、お酌する姿、煙草を吸う姿、どのシーンを見ても息をのむ美しさ。Pino/20代