この度、本作の大ヒットを記念して本木克英監督、編集の川瀬功、矢島孝プロデューサーが来場者からの質問に答えるティーチインイベント【スタッフ大暴露の回】を実施!
先日行われた第一回ティーチインイベント【チーム木更津(西木&滝野)の回】では阿部サダヲ&佐藤隆太が登壇。映像作品では約20年ぶりの共演となった二人が撮影時のエピソードや過去作品での共演時の思い出を披露し、ファン垂涎のお宝トーク連発の貴重なイベントとなった。
第二弾として開催された【チーム中間管理職(鹿島&遠藤)の回】には渡辺いっけい、忍成修吾、本木克英監督が登壇。 SNS上でも「渡辺さんと忍成さんのシーンが強烈に刺さった!」「二人のやり取りに心が乱された。」と大注目の二人が登壇するとあって、イベント来場者からは質問が殺到。強烈な印象を鑑賞者に植え付けたシーンについて、今だからこそ話せる撮影秘話を披露した。
そして第三弾となる今回は【スタッフ大暴露の回】と題して本木克英監督、川瀬功(編集)、矢島孝プロデューサーが登壇。大ヒットとなった本作を制作陣の目線から振り返り、ここでしか聞けない貴重な制作の裏側を大暴露した。
本木監督は「本日はスタッフデーということで、たくさんの方にご来場いただき嬉しい限りです。ありがとうございます」と挨拶。
続く川瀬氏は「普段はこのような場に登壇しないので緊張しているが、楽しんでいってほしい」とコメントし、矢島プロデューサーは「本日はスタッフ暴露の回とのことで、できる限り質問に答えて裏話を暴露していきたい」と気合十分に意気込みを語った。
『シャイロックの子供たち』大ヒットの反響を受けて、本木監督は「約1年半前の準備期間中は、コロナ禍に入ったこともあり撮影できないのではないかと思っていた。すべてが手探りの中、延べ1000回に及ぶ抗原検査やPCR検査を行い、結果として1度も撮影を止めずにクランクアップできたのは奇跡。こうして多くの方に観ていただき感無量です」と撮影当時を述懐。
続く川瀬は「原作本を読んだときは、群像劇なので構成が難しい作品になるだろうと思っていた。脚本がなかなか上がってこなかったので心配していたら、撮影が始まる1週間前に最終稿がきて、キャスティング等もバタバタと決まっていったのを覚えている」と当時の慌ただしさを振り返った。
続く矢島プロデューサーは「危機的状況だったので、スタッフの協力なくしては撮影できなかった。本木監督は群像劇を撮るのが上手い監督なので、スムーズに撮影が進み非常に助けられた」と、苦難を乗り越えて公開を迎えた喜びを嚙み締めた。
周りからの反響について本木監督は「シリアスな場面が多い作品なので、試写会でお客様が笑っていたのが意外だった。阿部サダヲさんや柄本明さんをはじめとした実力派の皆さんの演技に助けられ、深刻になりがちな話を軽やかに描けたのは良かった」と驚きを交えつつコメント。
川瀬は「SNS上のコメントやYahoo!等での評価を見ていると、2時間があっという間だったという声が多い。勇気づけられるし、やっていてよかったと思う瞬間」と喜びを明かした。
ここで全国から募集したファンからの質問に答えるQ&Aコーナーに。寄せられた質問の中から選ばれたのは〈西木と遠藤のその後はどうなったと思うか〉というもの。阿部サダヲ演じる西木は劇中の最後に会社を去って行方知れずとなり、忍成修吾演じる遠藤もつらい仕事に耐え切れず心を壊してしまってからは登場シーンがない。
この質問に対し、矢島プロデューサーは「遠藤は転職して楽な職場で働いていてほしい。西木は沢崎と組んで何か新たなことを始め、酒場で2人でお酒でも飲んでいるのではないかと思う」と回答。
本木監督は「原作では西木は失踪してしまい、殺されてしまったのではないかと思わせる描写もある。映画化にあたり、誰も死なない話にしたいと原作の池井戸潤先生や矢島プロデューサーからの希望もあったので、工夫が必要だった。映画の最後で西木が歩いていく場面は難しいシーンだったが、阿部さんが西木の次のステージを思わせるような絶妙な表情で演じてくれた」と撮影の裏側を語った。その印象的なラストシーンは、ぜひ劇場で確かめてほしい。
続いて会場に集まった方からの質問コーナーに。
キャスティングについての質問に対し、矢島プロデューサーは「原作を読んで、すぐに阿部さんが思い浮かんだ。西木のやる気があるのかないのか分からない飄々としたところや、それでも目の奥に何かを持っているところがまさにという感じで、即決でオファーした。愛理に関しても、強さと優しさを兼ね備えているイメージが上戸彩さんにぴったりで、子育てのタイミングも落ち着いていたこともあり依頼できた。玉森裕太さんはスタッフから『パラレルワールド・ラブストーリー(2019)』の芝居が良かったという声があり、お願いした」とメインキャスト3人について回答。会場からも納得の声が漏れた。
ロケ地に関するエピソードについて聞かれると、監督は「沢崎が持っている耐震偽装のビルは、町田にある建物。ネガティブなイメージになってしまうので撮影されるのを嫌がる人が多いところ、協力的なオーナーがいて助かった。ビルに入っているテナントの名前はすべてCGで変えているが、地元の人はすぐにどの建物か分かるのではないか」と裏話を披露。
川瀬は柳葉敏郎と佐々木蔵之介の演技が光る船橋競馬場のシーンについて「実はあの二人と競馬場は合成。実際はグリーンバックで芝居をしてもらい、馬が走るシーンは後日撮ったもの」と撮影の裏側を暴露。
監督も「スタッフが自転車に乗って目線を誘導し、馬役として盛り上げていたのを思い出した。蔵之介さんはそれを感じさせない自然な演技で、うまかった」と佐々木の熱演を振り返り、会場からは驚きと称賛の声が上がった。
続いて〈編集の過程でカットせざるを得なかった重要なシーンはあったか〉という質問に対し、川瀬は「役者の皆さんが芸達者で無駄な芝居がないので、編集が難しかった。ハラハラドキドキさせるために、微妙な表情を大切にしながら構成していった」と編集者ならではの目線で回答。
続く監督は「過去の作品の中には「このシーンは残せばよかった」と今でも心残りに思うものもあるが、今回は切りすぎたシーンや無駄なシーンは1つもない。自分が最初の観客のつもりで、2時間見ても飽きさせないように構成でき、非常にテンポの良い作品になったと思う」と答えた。
この力強いコメントに、会場からは納得と感心の思いがこもった温かな拍手が贈られた。
イベントの最後に、矢島プロデューサーは「作った側も何回観ても面白い作品。ぜひ何度も劇場に足を運んでほしい」と挨拶。続く川瀬は「まだまだ上映は続くので、皆さんでSNS等でも盛り上げていただきつつ、一人でも多くの人に見てもらいたい」と思いを語った。
最後に、本木監督は「映画は、素晴らしい役者の皆さんに加えたくさんのスタッフに支えられて作られている。今日はそんなスタッフの思いも皆さんに受け止めていただけたと思う。本日はありがとうございました」と観客への感謝を伝え、ファンの熱気が冷めやらぬ中イベントは幕を閉じた。