映画『こんにちは、母さん』の公開中舞台挨拶が9月13日(水)に実施され、上映を見終えたばかりの観客から盛大な拍手で迎えられる中、吉永小百合、大泉洋、永野芽郁、宮藤官九郎、寺尾聰、山田洋次監督が登壇。それぞれ一言ずつ挨拶し、舞台挨拶がスタートしました。
吉永(神崎福江 / かんざき・ふくえ役):今日はお暑い中劇場へお越しくださりありがとうございます。この3年間、もう映画館で映画を見てもらえる日が来ないんじゃないかと心を痛めておりました。ようやく皆さんに観ていただけるような作品も完成し、こうしてみなさんのお顔を拝見できて嬉しく思っております。
大泉(神崎昭夫 / かんざき・あきお役):私にも本作についていろいろな感想が届いていますが、同じシーンでみんなで笑うのが楽しいという声が多いですね。僕の両親はなかなか事前にチケットを購入するような世代ではないのですが、両親にも映画公開日から最初の三日間が大事なので観てくれ、という話もしました。”映画の興行は最初が大事なんだから!“と言うと、母からは”そんなに大事なら自分で買えばいいじゃない”なんて言われたり...。何の話をしていたか忘れてしまいましたが(笑)この映画は、ぜひ映画館で観ていただきたいなと思った次第です。本日は楽しんでください。
永野(神崎舞 / かんざき・まい役):いつも大泉さんの後に挨拶するのが一番困るんですが...(笑)個人的な思い入れとしては、山田監督に“舞ちゃんのおへそをもうちょっと見せてくれよ”と言っていただいたことです。そのために人生で一番腹筋を鍛えました(笑)
宮藤(木部富幸 / きべ・とみゆき役):僕もこの作品は映画館へ観に行きました。知り合いの何人かには、木部みたいなやつはとっくにリストラされていると言われまして...どうもすみませんでした(笑)公開から2週間も経ってこれだけ満席なのはすごいことですね。最後まで楽しんでお帰りください。
寺尾(荻生直文 / おぎゅう・なおふみ役):全国のサユリストの皆さん、小百合さんから想いを寄せられる役を演じており、申し訳ありません(笑)本日はどうぞよろしくお願いいたします。
山田監督:本日はありがとうございます。コロナの影響で映画館へ行くことをやめてしまった人の多くが、中高年の女性たちだと思います。この方々が一番、僕の作品のお客さんにも多くとても悲しいことでしたが、この作品をきっかけに映画は楽しいと気づいてもらえたらと願いながら本作を作りました。まだまだ大変な時期だと思いますが、感染に注意しながらぜひ映画館へ足を運んでほしいです。
1日(金)より公開を迎え、週末興行収入ランキング邦画No.1を獲得し、満足度94.9%、口コミ推奨度94.3%と高い口コミでも話題を集めている本作。舞台挨拶では、お客様からの感想や口コミをもとにトークを展開。
まずピックアップされたのは、10代の観客からの「観ている時、一人で見たが映画館全員のお客さんと笑って一緒に観ているように感じた」という感想。
本作を映画館で観たという吉永は「私が観に行った劇場ではおとなしいお客さまが多かったのですが、私のお友達からはたくさん笑って楽しかったと感想をいただいて、監督にもお伝えしたところです」と明かし笑顔を見せました。
続いて、本作を3回リピート鑑賞したという一般客からは、「初回は昭夫さんがいたわしく心配で身につまされながら、2回目は細かいところで結構笑いながら。今日はカメラアングルや台詞回しの懐かしさ、暖かさを感じながら観ました。煎餅になぞらえて心情を吐露する大泉さんの台詞回し、とても寅さんを思い出しました。作品世界みんながとにかく可愛くて、暖かったです」という熱量高い感想も。
昭夫を演じた大泉を、監督は「本当に素晴らしい演技者だと思います。大泉さんを主人公にすれば、別の寅さんみたいな映画ができるんじゃないかと。それだけの力を持っている人だと感心しております」と手放しで称賛。そんな監督からの大絶賛の言葉に、目を閉じて深く頷きながら感動を噛み締める大泉。「言わせてるんじゃないかという気もしますが...(笑)こんなにありがたいお言葉はございません」と恐縮しながらも、嬉しさを隠しきれない様子でした。
三世代の親子が織りなす物語、そして福江と荻生の恋模様が描かれる本作。続いて紹介されたのは、「吉永小百合さん演じる福江と、大泉洋さん扮する昭夫が、これからどのように生活していくか。また、寺尾聰さん扮する荻生と、永野芽郁さん演じる舞のその後も気になりました。吉永小百合さん若い、恋する乙女!きっと、(荻生が移り住む)北海道まで追いかけていき、昭夫が足袋屋を継ぐと信じています」とその後の展開を妄想した感想。
そんな観客の妄想に、「いきなり足袋屋を継がされてもねぇ。“頼むよ母さん”、“母さんの出番だね”なんていう掛け合いをしていたのに出て行っちゃうんですか」と予想外の展開に思わずぼやく大泉。監督も「息子ひとりになっちゃうわけだよね」と反応し思わず笑いをこぼすと、大泉は「ハハハ、じゃないんですよ!監督」とツッコミをいれ、仲睦まじい掛け合いを展開する場面も。
物語の行方を想像した観客の感想に、監督は「こんなに嬉しいことはありません。あの3人はその後どうなるんだろうと想像してくださるのは、作り手にとっては本当に幸せなことですよね」と頬を緩めていました。
そのほか、永野芽郁、宮藤官九郎、寺尾聰ら、物語を豊かに彩ったキャスト陣についての感想も。まずは「舞ちゃん(永野芽郁)が涙を流すシーンがとても印象に残り、感動しました」という感想が紹介されると、永野は「舞が思っていることを初めて吐露するシーンですね。緊張感もある撮影で、1回目の撮影で自分では思ったよりも涙を流してしまったなと思っていたら、監督が
“舞ちゃんは綺麗に泣く必要はない。顔を崩していいから、もう一回”と言ってくださって。綺麗に泣かなくていいというのも分かってはいながらもどこかでセーブしていたと思うので、監督が気づいてくだった自分の中でも思い入れ深いシーンです」と撮影を振り返りました。舞の繊細な心情を丁寧に演じ切った永野に対し、そばで見守っていた大泉も「役者としてはすごい大変なシーンだったなと。監督から“君は辛くてしょうがないんだ。大人になって本当に大変なんだ”と演出が入る中で、最後に“期待してます!スタート!”っていう掛け声で撮影が始まったんですよ」と衝撃のエピソードを証言すると、熱すぎる演出に会場は爆笑!そんな監督の姿を大泉が「あれはすごい技だなと思いましたね。テレビでワールドカップを見ている視聴者の声が選手に直接届いているようなね」とたとえ、再び会場の笑いを誘っていました。
続いて、宮藤に対しては「昭夫と木部(宮藤官九郎)の取っ組み合いの喧嘩が迫力があり、思わずクスッと笑ってしまいました」という感想も。
このシーンの撮影で宮藤はクランクアップを迎えたというが、「セリフはなく揉み合っている声だけだと思って撮影に向かったら、予想以上にセリフがあって。大泉さんとその場で覚えて演じていると、監督が“違う違う!”と入ってきちゃうんですよね(笑)3人で喧嘩しているようなシーンになっちゃいそうでしたが、楽しかったです」と回顧し、再び監督の熱量が垣間見えるエピソードも飛び出しました。
さらに寺尾には、「50歳も近い昭夫に対して、“あなたはいくらでもやり直せる。あなたを羨望の眼差しで見つめている”と言われた時、自分に言われているような気持ちになり涙が出てきました。何か原点に戻れるような映画です」という温かな感想も。
寺尾は「監督から牧師さんという役を聞いて、当初はためらいがありお断りしたいとお伝えしたこともありました。こんなに懺悔したいことがある男が牧師を演じるのかと思っていましたが、徐々にだからこそやってみたいなと。このセリフからも、年を重ねてもやり直せるだろうという監督の思いを感じ、“寺尾もまだやり直さなきゃいけないことがあるぞ”とぶつけられたような気持ちになりました」と振り返りました。そう語る寺尾の隣で、「余談ですが...」と切り出したのは大泉。「あのセリフの後、“牧師さんがそう言ってたわよ”と福江が昭夫に言うんです。そして昭夫は“聞いてたよ”と繰り返すんですね。あのシーンで、僕ちょっと寺尾さんの真似が入ってたんですよ。するとそのシーンで笑いが起きていて、“ウケてる!”と思って。笑うシーンじゃないんですけどね」と秘話を明かし、会場を盛り上げていました。
そしてイベントの後半では、本日お誕生日を迎えた山田洋次監督にサプライズプレゼントの贈呈も!
監督へプレゼントされたのは、本日登壇したキャスト陣&会場に集まった一般客からのお祝いコメントで埋め尽くされた特大サイズの寄せ書き。会場からは大きな拍手が湧き起こる中、代表して吉永から「お誕生日おめでとうございます!これからは、監督作100本を目指して歩んでいただきたいなと思います。私たちもついていきます」とお祝いの言葉が贈られると、監督は照れ笑いを浮かべながらも「小百合さんにお祝いの言葉をいただくなんて、最高ですね。どうもありがとうございました」と感謝の言葉を述べました。
その後フォトセッションが行われ、イベントの最後には監督から劇場に集まったファンに向けコメントが。
「本日はお越しいただきありがとうございました。僕のつまらない挨拶よりも、大泉さんに話してもらった方がいい」と監督が大泉にマイクを渡すと、予想外の展開に戸惑いながらも「本日で宣伝活動も一区切りだと思うと寂しい思いがしますが、私としては毎週大ヒットで舞台挨拶したいくらいですけれども...(笑)これからもぜひ劇場へ足を運んでいただき、また本作をご覧いただければ嬉しいです。ありがとうございました」と締めくくると、会場は盛大な拍手で包まれイベントは幕を閉じました。