この度、本作への期待が高まる中、主演の倍賞千恵子、木村拓哉、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、山田洋次監督ら豪華キャストとスタッフが集結したタクシーセレモニーを実施。さらに丸の内ピカデリーでは完成披露試写会を開催し、公開を心待ちにしているファンたちの大歓声を受けながら、本作にかける想いや撮影現場でのエピソードなどを語り、大盛り上がりのイベントとなった。
イベントには、劇中同様に木村拓哉が実際にタクシーを運転し、助手席には倍賞千恵子を乗せて東京タワーに登場。木村のエスコートで倍賞がファンの待つピンクカーペットに姿を現すと、会場は熱狂的な歓声と拍手に包まれた。
続けて、カーペットには若き日の主人公すみれを演じる蒼井優、すみれの夫で結婚後に態度が豹変していく小川毅役の迫田孝也、木村演じる浩二の妻・宇佐美薫役の優香、浩二の娘・奈菜役の中島瑠菜、山田洋次監督も登壇し、総勢7名の豪華俳優とスタッフが集結した。
撮影時以来の木村の運転するタクシーでのドライブとなった倍賞は「木村さんはすごくまじめな方で、本当に運転がお上手なので安心して乗れました」と、ひとときの幸せを味わったことを告白。木村も「撮影以来のこの車の運転なので、懐かしいなという感覚でした。劇中は倍賞さん演じるすみれは後部座席にお座りになられていたので、今回のように助手席に乗っていただくというのは新鮮でした」と語った。
さらに「登場前に(蒼井)優ちゃんからは『木村さんできればバックでお願いします』と言われたんですが、ぶっつけ本番なので正面から停めさせていただきました(笑)」と登場前の裏話を明かした。『ハウルの動く城』以来21年ぶりの共演だが、実写作品では初共演となった倍賞と木村。ほとんどのシーンが二人きりのタクシー車内でのやり取りだった撮影を振り返り、倍賞は「『ハウルの動く城』ではほとんど会わなかったんです。プロデューサーの方に『せっかく木村君がいるんだから一日くらい一緒の日をお願いします』って言って、一日だけ一緒にアフレコしました。その時もあんまりお話しなかったですけど、今回は毎日タクシーの中でお話させていただいたので、とても満足でした。木村君はすごく勉強家で何かしら常に考えている優しい方です」と語る。
さらに木村も「幼少期から倍賞さんを拝見していたので、山田組で毎日ご一緒するというのは格別な想いでした」と語ると、倍賞は「そこまで言われると困っちゃうなあ」と照れながら笑顔を見せた。
7年ぶりの山田組への参加となった蒼井は「今までは緊張の方が前にきてしまっていましたが、今回は自分の殻を破りたいという想いがありました。先輩方の胸を借りて楽しんで撮影できたので、そしたら終わるのが本当にさみしくて。来年あたりに同じメンバーでセルフリメイクしたいです(笑)。そのくらい素敵な山田組の皆様との撮影でした」と振り返った。そんな蒼井と共演歴のある倍賞は「優ちゃんとは、彼女が10代の時にご一緒していたんですが、あまり一緒にお芝居することはなかったんです。今回ご一緒できると聞いて『やっと一緒にお芝居できる!』と楽しみにしていたんですけど、撮影ではほとんど会わなかったんです。それでも蒼井さんがすみれの若い時を素敵に演じられていたので、安心して歳をとれました」と絶賛。蒼井も「私がどう演じても、その先に倍賞さんが待ってくださっているという安心感があったので、思い切り演じることができました」と、憧れの女優である倍賞との念願の共演を振り返った。
蒼井演じるすみれの人生をかき乱す癖の強いキャラクター小川を演じた迫田は「私の演じた役はいわゆる“昭和の男”で少しバイオレンスな一面もあったんですが、迫田孝也の心の内としては、蒼井さんにおんぶにだっこで頼りきり、甘え切った撮影現場でした。山田組の撮影は私にはまだ緊張が強くて、OKが出ても『これでよかったのかな?』と思いながら蒼井さんを見ると、ニコニコしているので『多分よかったんだな!』と自分を慰めながらの日々でした」と現場での想いを明かした。すると蒼井は「私たちは重たいシーンが多かったんですけど、迫田さんのお人柄のおかげでずっと笑いの絶えない現場でした」と語り、すかさず迫田が「じゃあ私も褒めますけど、蒼井さんが受け止めてくれたから思いっきりできたんだよ?」と仲の良さを見せた。
山田組初参加となった優香は「全体のクランクインの日が、私のクランクインの日だったので緊張に包まれている現場でした。それでもすべてのスタッフさんが『山田監督のために』という精神で撮影されていたので、幸せな夢のような時間でした」とアットホームな撮影現場を回顧し、木村と優香の娘役の中島は「台本を頂いた時から緊張していましたが、木村さんも優香さんも家族のように温かく迎えてくださったので、撮影中も楽しめることができました。泣いてしまうこともあったんですけど、すごく楽しく温かく撮影に臨むことができました」と、多くの事を吸収した撮影現場を振り返った。
そんな豪華キャストを迎え、キャリア91本目となる本作を監督した山田は「僕の書いた脚本でお芝居する二人を見るというのは、僕にとってはとても楽しみでした。昔から映画界では『いい脚本ができて、気に入ったキャスティングが揃えば、8割方その映画は成功している』と言われています。この作品は僕なりにいい脚本ができて、素敵なキャストが集まってくださっている時点でうまくいっていると自分に言い聞かせていました」と作品に自信をのぞかせた。
会場を完成披露試写会に移し、一足先に本作を鑑賞した観客の前に登壇したキャスト陣と山田監督。
浩二とすみれの物語に感動の涙を流す観客たちを目の当たりにした倍賞は「作品をご覧になった方たちの前に出るのは初めてなので、逃げ出したくなるくらいドキドキしています!私は山田監督の『男はつらいよ』という作品で、さくらという役を長年演じさせていただきました。今回のような高いネックレスやネイルをしたすみれという役は初めてだったので、私にとって生涯忘れられない作品になりました。作品をご覧になった方が誰かと目があった時に、ハイタッチしたくなるような気持ちになってくれれば嬉しいです」と語り、木村も「作品をご覧になった皆さんと目があった時に、作品の良き理解者になってくださったんだなと感じました。自分を愛してくれている周りの皆様に感謝だったり、愛することの幸せを感じていただけたと思います。是非何度かこの作品に乗車してくれたら嬉しいです」と喜びの想いを滲ませた。
さらに自身にとって山田作品への出演が本作で70本目となる倍賞は「山田作品は私にとって学校でした。それもお芝居の学校ではなく、人間としてどう生きていくか学ぶ場としての学校でした。そして、山田さんは昔からバイタリティーがあって、変わらないです。今回もNGをたくさんいただきました。現場に入った瞬間から『こんな素敵なスタッフの皆さんと山登りができるんだな』という想いでした」と慣れ親しんだ山田組への想いを告白。『武士の一分』以来、19年ぶり2度目の山田組への参加となった木村も「以前、参加させていただいた作品は時代劇だったので、今回は現代劇で実際にいるかもしれない人たちを描いている現場でしたし、すごいテクノロジーも現場には取り入れていました。僕がすみれさんを乗せて運転しているシーンは実はほとんどがスタジオで撮影しているんですよ」と撮影裏を明かすと、会場からは驚きの声が上がった。
倍賞と木村の魅力を知り尽くし、本作では終活に向かうマダムとタクシー運転手という2人の新たな一面を引き出した山田は、映画作りについて「映画を作るという仕事は一言では説明できないほどに難しいんです。エキストラやスタッフ、キャストの皆さんと話し合いながら作り上げていくのが映画で、他の芸術にはないことだと思います。一緒に作り上げていく楽しさを全員が抱いてクランクアップを迎えて、僕自身も楽しく撮影できるのがベストです」と熱弁。
そんな山田監督から演出指導を受けた迫田は「山田監督からは『もっと色気を出して。君の演じる人物は二枚目のキャラクターなんだよ』と言われた時は困りましたね。今まで二枚目なキャラクターなんて演じたことがないし、僕の二枚目な部分を知っている人は現場に誰一人いなかったので(笑)」と撮影を振り返った。
浩二の妻を演じた優香は木村の演技のこだわりについて「実は浩二のアイマスクに裏設定があるんですよね?」と木村に振ると、「(夜勤が終わって)昼間に寝るのでアイマスクをした方が良いと思い提案しました。そのアイマスクは実は妻の薫が使っていたもので、その方が妻を近くに感じられると思い、そういう裏設定でやらせて頂きました」と木村がアイマスクに込めたこだわりを明かした。
続けて優香は「木村さんは細かい設定の事もすごく考えていらっしゃいました。浩二と薫はお金のこともすごく苦しいですし、大変だからケンカもしますが、それでもすごく仲が良くて娘のことをすごく大事にしている夫婦というのを2人で大切にしながら演じました。」と明かした。
娘の奈菜を演じた中島は「私の声が元々低めなので、お父さんが守ってあげたくなるような女の子にならなければいけないよと山田監督に言われていました。それでもなかなかうまくいかなかったので、呼吸の方法を一から教えて頂きました」と撮影現場での奮闘を振り返った。
そして最後に山田監督から「今日ここにいる素敵な俳優さんたちと映画を作り上げました。一生懸命に生きる人の一番普遍的な部分を描きました。そんな人たちが本当に幸せになってほしいというエールがこの映画には込められています。もし気に入ってくださったら、周りの皆さんにもお伝えくださると嬉しいです」と、本作を楽しみにしている視聴者への熱いメッセージが送られ、完成披露試写会は幕を閉じた。