監督:ローラン・ティラール
1967年2月18日、フランス生まれ。ニューヨーク大学で映画の勉強をし、芸能ジャーナリストとして働き、1999年に短編映画で監督デビューを果たす。脚本・監督を務めた『モリエール 恋こそ喜劇』(10)は第33回セザール賞脚本賞にノミネートされる。監督作品『プチ・ニコラ』(10)がフランスで観客動員552万人を超える大ヒットを記録。本作ではグレゴワール・ヴィニュロンと共同脚本を務めている。

『おとなの恋の測り方』という作品を思いついたきっかけは、何でしたか?
美しい女性が背は低いけれどとても魅力的な男に恋をするという内容の、マルコス・カルネヴァーレ(Marcos Carnevale)監督のアルゼンチン映画『Corazón de León』(未)の権利を買ったプロデューサー、ヴァネッサ・ファン・ザーレンと会いました。その作品は2013年に母国アルゼンチンで大ヒットしましたが、他の国では公開されませんでした。ヴァネッサにこの映画のリメイクを制作して欲しいと頼まれたのです。僕には既に他の仕事が入っていたので彼女からの申し出は断るつもりだったのですが、翌朝その映画を観て、すっかり心を奪われてしまいました。題材は現実的であると同時に、力強く、独創的で、意外なものでした。僕はすぐにそのコメディの、真に感情に訴える力を見抜きました。映画自体は典型的な「南米映画」で、テレビの連続メロドラマとよく似たタイプの作品だったので、それを少し書き直してヨーロッパ風にするのは、いい考えだなと思いました。
アレクサンドル役にジャン・デュジャルダンを起用した理由を教えて下さい。
脚本を仕上げた我々は、キャスティングの事を考え始めました。そこで「思い切ってジャン・デュジャルダンにオファーしよう!」となったわけです。元の映画の主役はアルゼンチンのスター俳優でした。本作も特別なセックスアピールがあり、明らかにカリスマ性のある有名な俳優の背を縮める事により、映画に楽しい雰囲気が出せるだろうと思いました。ジャンは24時間以内に引き受けてくれました。彼も非常に面白がってくれたので、彼のスケジュールが空く2015年春まで撮影を延期しました。ジャンは非常にプロ意識が高く、徹底した人です。『BRICE DE NICE』(未・05)や『OSS 117』(未・06)からは、彼が思い切った事を出来る俳優だと分かりますが、この作品では感情をより表現したかったので、彼をもっと控えめで真面目なタイプに描きたかった。彼は非常に直感が優れていて、すぐに僕の意図を理解してくれました。脚本や役者の選択について話し合う度に、僕は彼に実に感心したものです。
ディアーヌを演じる女優も、すぐに見つかったのですか?
いいえ、僕はキャラクターをなかなかイメージ出来ずにいました。そこで、フランスではむしろ珍しい選び方をしました。何人かの女優さん達にオーディションに来てもらったのです。有名な女優も、そうでない女優もいましたが、全員がオーディションを受けました。ヴィルジニー・エフィラの事を僕はあまり知りませんでしたし、彼女の出演作もあまり観た事がありませんでした。しかしオーディションを通じて、彼女しかいないと強い感銘を受けたのです。彼女にはコメディの素晴らしい才能があり、驚くほど細やに演じることができる女優です。彼女は、ベルギー出身で元TVキャスターである事にコンプレックスがあるようですが、僕は彼女を、知的で極めて洗練された女性だと思います。
本作の撮影にはどのような特殊効果を使いましたか?
ポスプロ段階と同じ位の特殊効果を撮影中も使いました。今回、キャラクターを縮めるだけでは十分ではありませんでした。それだとアレクサンドルの頭と手が小さくなってしまい、クローズアップした時に奇妙に映るのです。しかし、撮影前にテストを重ねたおかげで適切なサイズが出せましたし、どのようなテクニックが効果的かもチェックする事が出来ました。CGの他にも、ジャンが膝まずいて撮影するといった簡単なものもありましたし(彼の肩の高さで撮る)、もしくは遠近法を利用したり(彼が小さく見えるよう、より奥の方に彼を置く)、更に複雑な、例えばディアーヌのオフィスのシーン、アレクサンドルがブルーノに邪魔されて椅子から飛び上がるショットについては、ジャンの着地点以外は部屋全体を40cmほど底上げして撮影しました。それらの作業全てが、極めて職人技の利いたものばかりでした。
完成した作品を観て、どう思いましたか?
初めて大人の映画を作った!と思いました(笑)。個人的な経験や悩みが、多少なりとも詰まった作品です。そして僕自身初めて、感情をより深く突き詰める事が出来ました。自分にとって挑戦的な作品でしたし、それを達成出来た事に、今の所一番満足しています。