現地時間 7 月 26 日(日)、28 日(火)の 2 日間、現在開催中の第 30 回ファンタジア国際映画祭にて、本作のメガホンをとった清水崇監督の生涯功労賞受賞授賞式と『八つ墓村』ワールドプレミア上映が行われました。
【『八つ墓村』ワールドプレミア上映レポート】

9 月 18 日より公開となる映画『八つ墓村』が、第 30 回ファンタジア国際映画祭にて、現地時間 7 月 28 日(火)にワールドプレミア上映された。
平日の夜にも関わらず会場前には長蛇の列ができチケットは完売。満席となった約 800 人の観客による大拍手と歓声に迎えられ、清水崇監督が登壇した。

清水監督は「ずっと来たかった映画祭に、今回やっと来ることができました。しかも新作の映画を 2 本(『八つ墓村』、『口に関するアンケート』)も上映していただけてすごく光栄です」と挨拶し、場内からは再び割れんばかりの拍手が起こった。続けて「この作品は、小説自体も横溝正史先生も、金田一という探偵のキャラクターもすべてにおいて有名でファンが多い作品です。変なアレンジをしたら横溝先生のファンの方から叱られるんじゃないかと思いながらオファーを引き受けました」と、当時の思いを吐露。
さらに、「原作関係者がこの作品をご覧になることには非常に緊張しましたが、“今”この作品を映画化するならば、自分が監督をさせてもらうならば、という思いで色々と挑戦させていただきました」と映画化への思いを語り、「実は、横溝正史さんの二女・野本瑠美さんが初号試写で映画をご覧になっていて、絶賛してくださったのでまずは少し安心しました」と明かした。さらに、このワールドプレミアには、野本瑠美さんの息子(横溝正史さんのお孫さん)である野本温さんご夫婦も駆けつけており、上映後には「素晴らしい!すごく面白かったです!」と清水監督と熱い握手を交わす場面も。これには清水監督も感無量の様子を見せていた。
映画の上映中は、会場から大きな笑い声が響いたり手拍子が起こったりと一体となって熱気に包まれ、エンドロールが流れると満杯の客席から鳴りやまない拍手が巻き起こった。
上映後に行われた観客との Q&A セッションでは、贅沢なロケーション撮影の苦労について問われると、「何度も映像化されている横溝先生の作品ということもあり、特に岡山県の広兼邸をはじめ、ロケーションやセットに対するサポート体制が手厚かったです。非常に贅沢に撮影させてもらいました」と撮影を振り返った。
続いて、前作『口に関するアンケート』では墓地の木、『八つ墓村』では大きな杉の木が印象的に登場することから、「『木』にまつわる特別な繋がりや思い入れはあるか」という質問が飛ぶと、「特に正直こだわっているわけではないのですが、双子杉については横溝正史先生の原作に少し違う形で登場するものからヒントを得ています。今ようやく気がついたのですが、木に憑りつかれているのは私かもしれないですね」とユーモアを交えて回答し、客席からは笑いが起こった。
また、時代設定を現代に変更した意図を問われた清水監督は、「私自身、1977 年の野村芳太郎監督版が大好きですが、今この時代に『八つ墓村』を映画化するにあたり、まず過去の作品や原作を知らない若い世代に見てほしいと思いました。そもそも、原作を忠実に成立させるには戦後の混乱期や旧憲法下という背景が必要ですが、令和の今、若い世代が一番共感しやすい現代へと設定を変更しました。とは言っても、例えば探偵がインターネットでプロファイリングし始めたりすると“金田一”というキャラクターの本質が変わってしまうので、そのあたりは慎重にバランスをとりました。また、SNS で顔や名前を隠したまま他人を攻撃する現代社会の現象は、劇中で面を被り正体を隠して殺しを行ったり、辰弥を追い詰めるため田治見家を集団で襲撃したりする村人たちの姿と重ねて描くことができると思いました。これこそ“今”描くべきだと確信したことも、この時代設定に決めた理由でもあります」客席からはまだまだ質問の挙手が続いていたものの、惜しまれつつもタイムオーバーに。熱狂に包まれた会場を後にし、イベントは大盛り上がりのうちに幕を閉じた。
【生涯功労賞授賞式レポート】

さらに、現地時間 7 月 26 日(日)には日本人 4 人目の快挙となる「生涯功労賞」の授賞式が行われ、大歓声の中呼び込まれた清水崇監督。場内の観客が総立ちとなり、熱狂的なスタンディングオベーションが響き渡った。トロフィーを授与された清水監督は、熱気に包まれた客席へ深々と一礼。それでも鳴りやまぬ拍手と歓声に対し、監督自ら観客に着席を促すジェスチャーを見せると、会場は温かな笑いに包まれ、和やかな雰囲気で授賞式がスタートした。

会場の熱狂的な反応に対し、監督は「言葉にならないくらい嬉しいです。まずは、映画祭 30 周年おめでとうございます。そんな記念すべきタイミングに、こんなに嬉しい場を設けていただき感謝いたします」と感謝を述べた。続けて「僕のフランス語がどこまで通じているかわからないですが、通訳に時間がかかることをお許しください」とジョークを交え、会場を和ませる。

さらに、自身のキャリアについて「子供の頃は怖がりで、14 歳の頃までホラー映画を見るのは“変わった人たち”だと思っていました。15 歳の頃に『死霊のはらわた』という作品を見て“こんな作品を作る監督はろくなもんじゃない、とても悪い大人に違いない”と思っていましたが、そんなサム・ライミ監督から 35 歳の頃に「アメリカで映画を作らないか」とチャンスをもらいました」と、ハリウッドでの経験を振り返ると、会場からは再び大きな拍手と歓声が湧き起こった。
続けて「実は明日が誕生日なのですが、人生の半分以上ホラー映画を撮り続けていることになってしまいました」と明かすと、客席からは再びスタンディングオベーションが起こり、日本語で「お誕生日おめでとうー!」と熱烈なコールも響き渡った。
「人生何が起こるかわからないとは言いますが、こうして映画を撮り続けて、こんなに喜ばしいことが起こると、明日にでも殺されるんじゃないかと不安になったりもします(笑)。もう少しだけ撮りたい映画もあるので、まだ生かしておいてください」とユーモアたっぷりに語ると、会場は割れんばかりの爆笑に包まれた。
鳴り止まぬ称賛と喝采に、手応えを噛み締めるように熱い想いと感謝を語った清水監督。