主人公・尚志役に命を吹き込んだのは佐藤健。

「尚志さんの揺るがない信念と、大きな包容力を演じられるのは、佐藤健さんしか居ないと思った」(渡辺P)。

出演オファーに際し、佐藤にドキュメントの映像を見せたところ、

「是非、尚志さんを演じたい。決してスーパーヒーローではない、普通の人が強い気持ちで成し遂げたことを偽りなく体現したい」

と熱い言葉が返ってきた。撮影前から、尚志のキャラクターについてスタッフとディスカッションを重ね、演技プランを綿密に練り上げて現場に臨んだ。一か月強に及んだ地方ロケの間、佐藤は一度も東京に戻ることなく、本作に文字通り心身を捧げたことにも触れておきたい。
ヒロイン・麻衣を演じたのは土屋太鳳。

「麻衣さんご本人にお会いしたとき、持ち前の明るさと屈託のなさで周囲を惹きつける魅力を感じたんです。その天真爛漫なキャラクターが土屋太鳳さんのイメージにぴったりだと思ったんです」と福島Pは語る。

一方で本作での土屋の演技からは、これまでの俳優イメージを覆すほどの凄まじさを感じる。特に、麻衣が体調の異変を感じて半狂乱のまま病院に運ばれるくだりは強烈なインパクトがある。闘病中のシーンは4時間かけての特殊メイクで挑んでおり、一連の体当たりの芝居がこの物語の壮絶さを深く印象付けている。

実在の人物を演じるということで、佐藤・土屋はともに並々ならぬ覚悟で本作に挑んでいる。撮影前には、二人そろって岡山を訪れ、尚志さん、麻衣さん、ご家族と面会。当時のアルバムなどを見せてもらいながら、長時間の取材を行い役作りに生かした。撮影に入ってからも、共演歴のある二人の息はぴったりで、カメラの外では自主的に芝居を合わせることも珍しくなかった。
尚志と麻衣の関係性は、8年という時間の中で劇的に変化していくが、佐藤と土屋はそんな二人の激動の人生を全力で演じている。