ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団
(West-Eastern Divan Orchestra)
ユダヤ系指揮者のダニエル・バレンボイムと、パレスチナ系文学者のエドワード・サイードによって、1999年に設立されたオーケストラ。 楽団の名称はドイツ人作家ゲーテの著作『西東詩集』(West-östlicher
Divan)から命名。ゲーテの精神に倣い、イスラエルとアラブの音楽家が集まって演奏する。
主な活動はバレンボイムの指揮でオーケストラのリハーサルをし、サイードの指導でディスカッションを行なうというものだった。2003年にサイードが死去してからも、「共存への架け橋」の理念を掲げて、バレンボイムを指導者として、現在も世界中で音楽活動を続けている。2005年にはパレスチナ自治区ラマラにて、厳戒態勢の中で演奏会を実施し、大きな感動を呼び起こした。2007年にバレンボイムが国連平和大使に任命され、管弦楽団は2016年に“文化理解のための国連グローバル・アドボケイト”に指定された。
ダニエル・バレンボイム
(Daniel Barenboim/1942年11月15日~)
ロシア系ユダヤ人。現代屈指の巨匠指揮者、ピアニスト。
祖父母の代にアルゼンチン・ブエノスアイレスへ移民し、1952年に両親と共にイスラエルへと移住。7歳で演奏会デビュー、20歳で指揮者デビューを果たす。1970年代からパリ管弦楽団、シカゴ交響楽団、ベルリン国立歌劇場で音楽監督などを歴任。現在、ベルリン国立歌劇場音楽総監督、ミラノ・スカラ座客演指揮者、ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団創立者兼指揮者。2021年6月、16年ぶりに日本でピアノリサイタルを行った。
エドワード・サイード
(Edward Wadie Said/1935年11月1日~2003年9月25日)
パレスチナ系アメリカ人。文学研究者、文学批評家、コロンビア大学英文学・比較文学教授。
イギリス委任統治下のエルサレムでパレスチナ人として生まれ、主にエジプト・カイロで育つ。家族はイギリスの影響を強く受けたアラブ人キリスト教徒。10代でアメリカに渡り、市民権を手に入れた後にパレスチナとエジプトに戻る。主著の「オリエンタリズム」でオリエンタリズムとポストコロニアルの理論を確立。音楽についても膨大なエッセイを書き、ピアニストとしても活躍した。