敵対する若者たちのオーケストラ、
コンサートまで21日間の合宿の行方は
“世界で最も解決が難しい”とされる紛争が今この時も続くパレスチナとイスラエルから、音楽家を夢見る若者たちを集めてオーケストラが結成される――。現実にはあり得ない物語に見えるが、実在するユダヤ・アラブ混合の管弦楽団に着想を得たという驚きの映画が完成した。若者たちの対立と葛藤、恋と友情を彩るのは、ヴィヴァルディの「四季」より《冬》、ラヴェルの「ボレロ」、パッヘルベルの「カノン」など誰もが知るクラシックの名曲の数々。彼らを導くマエストロに『ありがとう、トニ・エルドマン』のペーター・シモニシェック。この極上のヒューマンドラマは、アメリカ、ヨーロッパの国際映画祭で上映され、熱い喝采のもと4つの観客賞に輝いた。
「クレッシェンド」とは、「だんだん強く」を意味する言葉。音楽により生まれた小さな共振が、やがて世界に大きく響きわたっていく。和平コンサートまで21日間に迫った合宿の行方は?そして迎える、想像もしなかった結末とは――。ラストに待つ魂の協奏が、パンデミックや格差による分断の時代に、ひとすじの希望の光をもたらす感動作。
本作がインスパイアされた実在の楽団とは、現代クラシック音楽界を代表する巨匠指揮者ダニエル・バレンボイムと、彼の盟友の米文学者エドワード・サイードが、中東の障壁を打ち破ろうと1999年に設立した和平オーケストラ。ゲーテの著作のタイトルから「ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団」と名付けられたその楽団には、二人の故郷であるイスラエルとパレスチナ、アラブ諸国から若き音楽家たちが集い、「共存への架け橋」を理念に、現在も世界中でツアーを行うなど活動を続けている。