はじまりのみち

アニメの鬼才・原恵一監督の初実写作品であり、私の字幕翻訳家としての出世作でもある。第13回東京フィルメックスの特集上映『木下惠介生誕100年祭』をただの映画好きとして制覇したことが後に『はじまりのみち』の英訳を担当するきっかけとなった。 戦局が悪化する中、母をリヤカーに乗せて険しい山道を越えようとしたことが青年・木下恵介の人生と作風にどんな影響を与えたのか？と考察する野心的な物語。 釜山国際映画祭での海外プレミア上映が決まった際、日本人の戦時中の苦しみを描いた作品が韓国でどう受け止められるのかが心配だったが、上映後は会場が温かい余韻に包まれ、感動で泣いている方までいた。釜山に駆けつけた私自身も改めてこの作品の志の高さに感服した。 純粋に心に染みるドラマとして観てもヨシ。木下恵介いちげんさんでも予備知識なく大いに楽しめる。しかし、鑑賞後は主人公の作った数々の傑作を必ず観たくなるので、要注意！