簪

温泉宿に集ったお客さんたちの人間模様を描き出す、大好きな清水宏監督の作品。 露天風呂で簪を踏んでケガをしてしまったのに、「情緒が足の裏に突き刺さったと 思っているんですよ」と穏やかに言う笠智衆。彼に淡い思いを抱きながら、「これ から先のことはお天道様が教えてくれると思う」と洗濯ものに顔をうずめて泣く田 中絹代。ふたりのやりとりには、心をゆるゆるとほどいてくれるようなのどかなユ ーモアと、ほんの少しの寂しさが同居しています。ひとり残されても彼女の心の中 でひと夏の思い出が永遠に輝くように、観客の心にもいつまでも消えない余韻を残 す大人のための夏休み映画。