松竹は、100年に渡り約5,000タイトルの
映画を配給または製作し、映画史に輝く名作から、
コメディ、アクション、カルト作品まで、
さまざまな作品をお届けしてきました。

そんな中から、
“今、観たい映画”を
テーマに選んだ100

をご紹介。
初めて出会う映画から、
今また見返したい作品まで、
新たな感動に出会える作品がきっとあるはず。

松竹社員による渾身のレコメンド文から探すもよし、
気になる#タグを直感で選ぶもよし!
とっておきの1本を、
みつけてください!

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私の好きな松竹映画
ファブリス・アルデュイニ
Profile
ファブリス・アルデュイニ
パリ日本文化会館映画担当
1965年フランス生まれ。パリ国立東洋言語文化学院卒業。1997年より、在パリ日本文化会館に映画担当職員として勤務。
母校では2002年より「日本映画入門」を開講。劇場版、DVD版の日本映画字幕翻訳者でもある。
  • 砂の器

    公開年:1974年/上映時間:143分/監督:野村芳太郎

    Comment
    『砂の器』は国民的にヒットした70年代の日本の超大作映画の一つである。
    ある過酷な殺人事件の背景に潜んでいたのは人間の本質への長い、暗い、恐い旅路だったというストーリー。この映画はサスペンス・ミステリーというジャンルに分類されるのだが、同じジャンルの中でこの作品ほど観客を泣かせて感動させる映画は存在しないであろう。果たしてミステリー映画なのだろうかと疑問に思うくらいなのである。不思議なほどである。
    それは、この映画には普段のミステリー映画にはないドラマ性の次元が非常に高いという理由にあるのではないかと思う。作曲家芥川也寸志の素晴らしい音楽のおかげもあるが、この映画の持つ悲劇のハイスケールと構成はまるでオペラ級の格付けである。そう、キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』のスペースオペラやレオーネ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』のウエスタンオペラがあるように、『砂の器』はあえて「ミステリーオペラ」と名付けたい。和賀英良、ボーマン船長、ハーモニカはみんな長い、暗い、恐い旅をするという宿命を共有している不憫な人物なのある。これは偶然ではない。