松竹は、100年に渡り約5,000タイトルの
映画を配給または製作し、映画史に輝く名作から、
コメディ、アクション、カルト作品まで、
さまざまな作品をお届けしてきました。

そんな中から、
“今、観たい映画”を
テーマに選んだ100

をご紹介。
初めて出会う映画から、
今また見返したい作品まで、
新たな感動に出会える作品がきっとあるはず。

松竹社員による渾身のレコメンド文から探すもよし、
気になる#タグを直感で選ぶもよし!
とっておきの1本を、
みつけてください!

閉じる
私の好きな松竹映画
増當竜也
Profile
増當竜也
映画文筆
1998年よりフリーとして活動中。著書に『映画よ憤怒の河を渉れ』など。現在「キネマ旬報」誌で『戯画日誌』、映画サイト「シネマズplus」で『ニューシネマ・アナリティクス』連載。stand.fm『キネマニア共和国』配信中。
  • 砂の器

    公開年:1974年/上映時間:143分/監督:野村芳太郎

    Comment
    運命は変えられるが、宿命は変えられない。親と子の絆もまた宿命であり、いくら断ち切ろうとしても、それは果たせない。『砂の器』はそのことを訴え得た名作として今なお讃えられ続けているが、私は別の面でも衝撃を受けている。なぜ、あのような善人が殺されなければならなかったのか? いや、善人だから殺されたのだ。彼は息子と父親にしかわからない絆の中に無理やり侵入しようとする邪魔者であり、とどのつまりは究極の「小さな親切、大きなお世話」がもたらした殺意の実践であった。俗に市井の人情を尊ぶ“大船調”を旨とする松竹映画だが、『砂の器』は時に人情が悲劇を招くという闇の面まで描出している。戦時中、地獄のインパール作戦に従軍していたという野村芳太郎監督は、大船調に倣った職人的手腕を常に発揮しつつ、根底ではペシミズム的視線による「人情の裏返し」をも密かに吐露し続けていた。その事は彼の他作品を鑑賞することでも明らかである。