利休
公開年:1989年/上映時間:135分/監督:勅使河原宏
私の好きな松竹映画
松竹は、100年に渡り約5,000タイトルの
映画を配給または製作し、映画史に輝く名作から、
コメディ、アクション、カルト作品まで、
さまざまな作品をお届けしてきました。
そんな中から、
“今、観たい映画”を
テーマに選んだ100本
をご紹介。
初めて出会う映画から、
今また見返したい作品まで、
新たな感動に出会える作品がきっとあるはず。
松竹社員による渾身のレコメンド文から探すもよし、
気になる を直感で選ぶもよし!
とっておきの1本を、
みつけてください!
の花、ワダエミの衣装デザイン、西岡善信の美術――公開時は、この茶の湯の
美とコンテンポラリーアートの融合に狂喜乱舞するばかりだったが、年とと
もに目の行く場所は変化していった。
10分におよぶ待庵での秀吉とのシーンで、利休のこめかみに流れる一筋の汗
。金の茶室と待庵、赤楽と黒楽の存在を別ものと考えることはできないと言
い、愛弟子・山上宗二に「宗匠様の襞の多い考え方を飲み込めない」と理解
されず、押し黙る利休。こんなに“人間的”な利休が、なぜ最期の決断に至っ
たのか当時は違和感を覚えたが、今は腑に落ちる。映画とは観るタイミング
によって変わるものであり、だからこそ惹かれるのだ。
『利休』の中で、印象的に登場する地球儀。ポルトガル人宣教師から信長へ
、信長から利休へ、利休から秀吉へと贈られる丸い地球儀は、日本国の在り
様を示すと同時に、絶えず新しいものを取り入れ、代謝し続けるべきだとい
うメッセージでもあるのではないか。勅使河原宏監督は、家康にも「終わり
は新しいことの始まり」と言わせている。
「未来の彫刻は地球そのものに刻み込まれる」。イサム・ノグチが1933年に
閃いた概念だが、これも同様なのだと思う。映画は、父で草月流創始者の勅
使河原蒼風と、イサム・ノグチに捧げられている。波乱に満ちた時代を生き
た2人は、アーティストとしてリスペクトし合った。蒼風は草月会館改修の
際、イサムに玄関口の作庭を依頼。「天国」と名付けられたこの石庭は、現
在も観ることができる。そんなイサムを宏は、“全体を見据えることのできる
環境芸術家”として千利休にたとえている。