永遠の人
公開年:1961年/上映時間:107分
著名人のおすすめコメント
- 朝原雄三映画監督ウソかマコトか木下恵介監督は試写室でしばしば、「いいねえ、素敵だねえ」、「ボク、(演出が)ウマイねえー」と思わず声に出しながら自作のラッシュをご覧になっていたそうです。さすが「二十四の瞳」「カルメン故郷に帰る」などの大ヒット、名作の数々を連発した天才監督!そして今、ぼくもDVDで「永遠の人」を見ながら、「いいねえ、ステキだねえ。ウマイねえー」と声に出しそうになってしまいます。その脚本のモダンさ、撮影の見事さ、演出のテクニック。「ヨッ、天才監督!」
けれど「永遠の人」をはじめ木下作品がこんなにも素晴らしいのは、やっぱり松竹という会社が、大船という撮影所が、映画の持つ力を当時まだまだ本当に信じて作品を送り出していたからではないかしらん、と考えてもしまうのです。次の松竹映画の百年に幸あれ。 - 徐昊辰映画ジャーナリスト木下恵介監督はずっと映像の限界に挑戦しています。日本の初カラー映画「カルメン故郷に帰る」から、斜めに撮影された「カルメン純情す」。そして「永遠の人」、こんな泥臭い物語を自然豊かな阿蘇を背景とし、田舎という閉じられた空間で、地主と小作人、親と子、男と女の間、とんでもない展開が続きます。何より日本のモノクロ映画にフラメンコの音楽と熊本弁の歌詞をかける木下監督は、本当に天才でかっこよかったです!この非日常の世界で、高峰秀子と仲代達矢の演技合戦ができました!人間が生きるとはどういうことなのか?本当の愛とは何か?この究極の愛憎物語を日本映画史、いや世界映画史に永遠に残したい!
- 内藤由美子シネマヴェーラ渋谷 支配人木下恵介監督が阿蘇の雄大な自然を舞台に描く三十年に渡る夫婦の愛憎劇。夫が犯した罪がもたらす憎しみの連鎖を五章形式で描き、語りとスパニッシュ・ギター、コーラスで物語る手法はギリシャ悲劇を思わせる。”空気のような”、”子はカスガイ”的な日本的夫婦像を完膚なきまでに破壊する高峰秀子が素晴らしい。日々夫への憎しみを育て、笑わず、息子が自殺してもなお恨みは続く。対する仲代も妻への執着を捨てられない夫を好演。
『永遠の人』とは誰なのか。妻のかつての恋人(佐田啓二)だとしたら、結ばれなかった故に忘れられない夢のようなもの。宿命的に結びついた夫婦こそ、互いにとっての永遠の人なのかもしれない。最後に天啓のようにもたらされる和解の演出は、これが映画だと言いたい素晴らしさ。三代に渡る話を100分にまとめる木下の演出のスピード感と、美しい山並みや田園を映し出す名ショット。アカデミー外国語映画賞にもノミネートされた凄絶な傑作。